快削鋼とは
(かいさくこう)
快削鋼(かいさくこう)とは
快削鋼(かいさくこう)は、「切削加工を容易にすること」を目的に、通常の炭素鋼や合金鋼に硫黄(S)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)などの“快削元素”を微量添加し、被削性(削りやすさ)を大幅に向上させた、特殊鋼の一種です。
このページの内容
- 快削鋼を使うメリット
- 被削性向上のメカニズム
- 快削元素と その効果
- 快削鋼の使用例 (別ページ)
快削鋼を使うメリット
| 1.生産性向上 | 高速・連続加工が可能になり、量産部品(ねじ、小型構造部品など)の加工サイクルタイムを短縮できます。 |
| 2.工具寿命延長 | 潤滑効果と切削抵抗低減により、ドリルやエンドミル、バイトなどの摩耗が抑制され、トータルコストを削減できます。 |
| 3.安定した加工品質 | 切りくずの形状が均一なため加工が安定し、無駄なコストの発生を抑制できます。 |
被削性向上のメカニズム
1.切りくずの破砕
切りくずが細かく折れ、長い帯状になりにくいため、連続加工時の絡み付きや切り粉詰まりを防止します。その結果、加工トラブル(切りくず絡み、ワーク傷付け)が減少し、品質安定化に貢献します。

2.潤滑作用
工具との摩擦面で潤滑層を形成し、工具寿命を延ばす役割を果たします。
3.加工抵抗の低減
総合的に切削抵抗が下がることで、切削速度の高速化や送り速度の向上が可能になります。
快削元素とその効果
快削鋼に添加される代表的な元素とその効果をまとめた一覧です。硫黄や鉛は切りくずの微細化や工具摩耗の低減に寄与し、ビスマスやテルルはさらに被削性を高めるために用いられます。
| 元素 | 添加量(質量%) *1 | 効果 |
|---|---|---|
| 硫黄(S) | 0.10~0.35 | 結晶粒界に介在し、切りくずを微細に破砕しやすくする |
| 鉛(Pb) | 0.10~0.34 | 切りくずの破砕を助け。被削性を向上・潤滑効果で工具摩耗を低減 |
| ビスマス(Bi) | ≦0.35 | 切りくずの破砕を助け、被削性を向上 |
| テルル(Te) | ≦0.08 | SやPbと複合添加してさらに切削性を向上 |
*1:目安値

まとめ
快削鋼は、切削加工の効率化とコストダウンを図るために開発された材料であり、各種部品の大量生産等で威力を発揮します。特に、加工量が多く時間を要する部品形状や、空間が狭く利用可能な工具が限られる場合では、快削鋼でなければ量産が難しいケースもあります。
さらに、非快削鋼に対し強度面も考慮して、快削鋼は設計・製造されています。
